シーソーゲーム

「リョウくーん。勝ったね」

 岸はやってきた。ウィニングボールを片手に、本当に嬉しそうであった。

「おいおい。そのボール、持ってきちゃったのかよ」

「え、だめなの」

「ま、いいか。一球ぐらい…記念としてもらっとけや」

「うん」

 甘え顔に押されて、本当はだめなのだが一球ぐらいは大丈夫だろうという勝手なことを言ってしまったが、それは良かったのだろう。

「そういえば、ナイスキャッチだったな。危なかったけど」

 岸は少し恥ずかしそうだったが、それは笑顔に変わった。

「ふふ、捕ったからいいじゃない」

「ま、そうだな。評価するべき対象は捕ったことだよな」

「そうだよ」

 笑顔をつくった岸は可愛らしい。俺もその笑顔に釣られてしまった。

「リョウ、水飲みに行かないか」

 小海から言われて、岸もどうだと尋ねた。

「いや、いいよ。行ってきなよ」

「…ああ、分かった。次の試合、分かるか」

「多分、分かる。ついていけばいいんでしょ」

「まあ、そうだけど…」

「じゃあね」

 そう言い残して岸は行ってしまった。

 何で一緒に水飲み場に行かないのかは分からなかったが、とりあえず、自分のことは自分で出来るという意志は分かった。

 俺は小海と水飲み場へ向かった。試合が早く終わったので、誰もここにいない。俺と小海の二人だけだ。

 それにしても、小海と一緒にいると、いつも思うことがある。あれが悪いのだが、また同じシチュエーションなので、一応どんな質問がきてもいいように待ち構えていた。

「それにしても、お前、飛ばしたな」

「まあな。たまたまだよ」

 俺たちはまだ遠くの方でボールと金属がぶつかる音を耳にしながら、それを見ていた。

「そうだ、リョウ。お前さ、あれ、考えてくれたか」

 やはりきたか。恐るべき対象。恐るべき事態。恐るべき予想。当たるもんだな。

 もちろん俺はその質問に対する答えは考えてある。そうでないと小海を意識なんかしない。