シーソーゲーム

「頑張ってね、リョウ」

「もしかしたら、お前も出るかもしれないぞ」

「マジ?」

「冗談だよ、冗談。もしかしたらだよ。もしかしたら」

 興味本位で聞いたことなのだが、水崎はマジメに応対していた。まさか野球を見ているだけのマネージャーである自分が打席に立っている姿を想像したら、血が引けて倒れてしまう自分を想像してしまうことだろう。今も実際にフラフラになりかねない様子だ。

 気付いたら相手の練習は終わっており、先攻後攻を決めるじゃんけんを氷野が行った。結果は負けで後攻。氷野はまた面目ないとつぶやきながらベンチに戻ってきた。打ってリラックスしてから守りたかったというのが本望だが、まあしょうがないと明るく氷野を迎えた。

 挨拶を交わして、普通に野球ができるチームと草野球未満のチームの試合が始まった。

 そして各々が守備位置につくのはいいが、ミズキと氷野に教えられて、ライトを守る岸があっちへこっちへと移動していた。

 この先思いやられる、と俺はその意味もなくあっちへこっちへ動き回る岸をはるか遠くから眺めていた。やっと守備位置につけたようで、俺は投球練習をしているアズサのほうを見た。あと一球らしいが、その一球は驚いた。

 アンダースローから繰り出される速球。百二十キロ後半はあるだろう。前までオーバースローだったのだが、どうしたのだろうか。それに、アンダースローでここまで出せるなんて、今までどんなことをしてきたのか疑問に思う。相手のベンチに眼をやると、口を開けたまま動いていなかった。ノックの時までへらへらと笑っていたのが嘘のようだ。