いつの間にかエレベーターは止まっていて、ドアは開いた。何もない広々としたきれいな玄関を通り過ぎ、自転車に乗って帰った。外は暗く、遠くの方で白と赤の縞々で塗られている塔がやけに目立っていた。
俺はもうマンションを見ようとはしなかった。見るとアズサの家のベランダを見ていて、そこにアズサが目を細めて遠くを見ている、時々目からこぼれる何かを袖で拭いている姿を想像してしまうからだ。なんでそんなことを思ったのかは分からない。ただ浮かんできたのだ。ふと浮かんできたのに、俺は疑問を持たなかった。
「…でさ。そいつったら…」
アズサは今日もけろっとしたように、昨日のことを忘れたのか、次々とぺらぺらと話している。もしかしたらある一種の才能かもしれない。
昨日は呼び出された時は何だと思ったが、今となっては夢となって散っていった。つまりの話、岸とは以前にも会ったことがあるかということであった。ただそれだけのこと。しかしずいぶん長々と居座ったような気がする。それに岸と以前に会ったことあるかなんて、変なことを言うわけが分からない。いつも欠かさず一緒にいた身だ。アズサもそのことを十分に理解しているはずだ。それになぜ岸限定なのか。自分よりかわいい転校生に嫉妬したか。そうだとしても、家まで呼び出すようなことではないと思う。他に何か話したかったのか。もしそれにしろ、わざわざ家に呼び出すことなのか。今までだってそうだ。秘密は互いに暴露してきた。秘密なしは常識だった。もし秘密があるなら、言ってくれるまで待つが。
俺はミズキと五月初めにある行事、球技大会の話をしようとした。
球技大会とは、クラスに慣れるためだとか言っているが、テスト後の疲れを癒すためだと見る。もちろん教師のだ。テストは四月末にある。その採点疲れは誰も持っているものだが、わざわざこういう行事を持つ必要はないと思う。かったるいたらありゃしない。授業もないし、テスト後なので、ついつい楽しんでしまう。
俺はもうマンションを見ようとはしなかった。見るとアズサの家のベランダを見ていて、そこにアズサが目を細めて遠くを見ている、時々目からこぼれる何かを袖で拭いている姿を想像してしまうからだ。なんでそんなことを思ったのかは分からない。ただ浮かんできたのだ。ふと浮かんできたのに、俺は疑問を持たなかった。
「…でさ。そいつったら…」
アズサは今日もけろっとしたように、昨日のことを忘れたのか、次々とぺらぺらと話している。もしかしたらある一種の才能かもしれない。
昨日は呼び出された時は何だと思ったが、今となっては夢となって散っていった。つまりの話、岸とは以前にも会ったことがあるかということであった。ただそれだけのこと。しかしずいぶん長々と居座ったような気がする。それに岸と以前に会ったことあるかなんて、変なことを言うわけが分からない。いつも欠かさず一緒にいた身だ。アズサもそのことを十分に理解しているはずだ。それになぜ岸限定なのか。自分よりかわいい転校生に嫉妬したか。そうだとしても、家まで呼び出すようなことではないと思う。他に何か話したかったのか。もしそれにしろ、わざわざ家に呼び出すことなのか。今までだってそうだ。秘密は互いに暴露してきた。秘密なしは常識だった。もし秘密があるなら、言ってくれるまで待つが。
俺はミズキと五月初めにある行事、球技大会の話をしようとした。
球技大会とは、クラスに慣れるためだとか言っているが、テスト後の疲れを癒すためだと見る。もちろん教師のだ。テストは四月末にある。その採点疲れは誰も持っているものだが、わざわざこういう行事を持つ必要はないと思う。かったるいたらありゃしない。授業もないし、テスト後なので、ついつい楽しんでしまう。



