アズサは座り、ゆっくりお茶を俺の目の前に差し出した。カチャンと音を立て、コトンとカップと皿のすれた音がした。俺は喉が渇いていた。このお茶がオアシスに思える。そのお茶があまりにおいしそうに見えたので、俺はまさか毒入りかと根拠のない勝手な憶測を展開してしまったが、それはアズサの一言で夢のように消えるのであった。
「ねえ、あの子、見たことある」
俺はきょとんとした表情をつくったのに気付いていなかった。お茶に見とれていたのもあるのだが、第一に質問おかしいと思ったからだ。しかしその質問を返すことなく、アズサは続けた。
「ああ、ゴメン…あの子っていうのは、ルイのこと。岸、瑠衣」
ルイ。聞いたことあるぞ。俺の頭にくっきりと顔が浮かんだが、思い出という思い出というのは追尾して浮かんでは来なかった。アズサのことだったらいろんなことが浮かぶのだが。
「知らない」
これを言えばお茶が飲めると信じていたが、やっと出てきた言葉のおかげで、それはお茶だけを右手に持たせるだけで終わった。
「今日転校してきたばかりじゃないか。それに、今まで俺と一緒にいて、岸なんか見たことあるか?」
なんでそんなことを聞く意図が読めなかった。いつもなら読める心理が読めない。前と同じだ。あの電話の時と。確かあの時からアズサは変わっていた。
最近のアズサは何だか、偽者に思える。
こんなことを思ったのは初めてだ。今までアズサを怪しんだり疑ったりしたことがない俺なのに、その時から首をひねり始めた。何かが動き出していた。歯車か、時計の針か、リングか。もしかしたら気持ちか。しかしどれも合っていないような気がした。動き出したのは別のもの。確信はできた。いつもと同様、根拠はないが、それは確実だった。知っているようで分からないもの。今はまだ分からないと思った。
「…ないなら…いい」
アズサはお茶を手にして飲んだ。もう話すことがないような空気になってしまった。しかし唐突にアズサはその空気を破った。
「私は…ある。それに、変だと思うだろうけど…リョウもいた」
「ねえ、あの子、見たことある」
俺はきょとんとした表情をつくったのに気付いていなかった。お茶に見とれていたのもあるのだが、第一に質問おかしいと思ったからだ。しかしその質問を返すことなく、アズサは続けた。
「ああ、ゴメン…あの子っていうのは、ルイのこと。岸、瑠衣」
ルイ。聞いたことあるぞ。俺の頭にくっきりと顔が浮かんだが、思い出という思い出というのは追尾して浮かんでは来なかった。アズサのことだったらいろんなことが浮かぶのだが。
「知らない」
これを言えばお茶が飲めると信じていたが、やっと出てきた言葉のおかげで、それはお茶だけを右手に持たせるだけで終わった。
「今日転校してきたばかりじゃないか。それに、今まで俺と一緒にいて、岸なんか見たことあるか?」
なんでそんなことを聞く意図が読めなかった。いつもなら読める心理が読めない。前と同じだ。あの電話の時と。確かあの時からアズサは変わっていた。
最近のアズサは何だか、偽者に思える。
こんなことを思ったのは初めてだ。今までアズサを怪しんだり疑ったりしたことがない俺なのに、その時から首をひねり始めた。何かが動き出していた。歯車か、時計の針か、リングか。もしかしたら気持ちか。しかしどれも合っていないような気がした。動き出したのは別のもの。確信はできた。いつもと同様、根拠はないが、それは確実だった。知っているようで分からないもの。今はまだ分からないと思った。
「…ないなら…いい」
アズサはお茶を手にして飲んだ。もう話すことがないような空気になってしまった。しかし唐突にアズサはその空気を破った。
「私は…ある。それに、変だと思うだろうけど…リョウもいた」



