シーソーゲーム

「…ウ、リョウ。ボーっとするな。ルイ様のありがたい話を拝ませてもらっているところなのに」

「え、別にいいですよ。私、そんなに偉くないですから」

「ほら。いいってさ」

 しかしアズサは不満そうな顔をしていた。何も話さなかった。つんとした表情で、こちらから顔を背けた。

 岸は微笑み、話を続けた。俺はアズサの言うとおり、岸の話を聞こうとしたが、まったく何の話か分からなかった。分かるはずがなかった。

 今頃後悔している。聞けばよかったというものではなく、あの無神経に言ってしまったアズサに対する言葉だ。

 岸の話が終わった後でも、俺には眼もくれずにつんとした表情でいて、一言も話さなかった。


 アズサが話し出してくれたのは放課後だった。それは俺の一言から始まったものであった。俺で終わらせたのだから、それは当然か。とりあえず、いつもの日常会話をするのがいいだろうと思った。

「今日はどうするんだ。どっか寄るのか」

 アズサは笑いもせず、怒りもせず、どちらでもない表情をしていた。

 そして人にとって一番決まりが悪いことに俺は今直面している。こういう場面には度々遭っているのだが、どうやって切り抜けたなんて、覚えているはずがない。だってそうだろ。いちいち今日の登校時に何を見てきたかなんて、覚えているはずがない。

 とりあえず、今は話してくれるだけで首にかかった縄が解かれるような気がした。

「別に。もう帰るけど」