シーソーゲーム

 なんでだか分からなかった。公園に寄る理由は何か。俺は不思議に思いながら、すっかり枯れてしまった声で返した。

 公園に入り、まだ日も高かったので、少年少女が仲良く遊んでいた。つまり子供がいたということだが、俺たちが入ってくるなり、全員、撤退するように風のようにあっという間に出て行った。

 まったく、今日はどうなっている。

 俺はアズサに先導されるまま、指の先にあるブランコに座った。

「で、一体、なんだ、話があるんだろ。言ってみろ」

「…あんた、覚えてないの。私が昨日の夜、何を言ったのか」

 アズサは厳かに、そしておそるおそる尋ねた。俺は相変わらず、アズサが何をしたいのか、何を話したいのかがまったくと言ってもいいほど分からなかった。

「は?昨日は夕方の携帯っきりじゃねえか。夜は話してないぞ」

「…そう」

 アズサはブランコを小さくこぎ出し、ブランコの音を軋ませていた。

 そして、風はしばしの沈黙をかき消しくれた。俺に何を言えばいいのか、考えさせる時間をくれたのだ。しかし俺の頭脳では、何かかける言葉が見つからなかった。そんな自分が恥ずかしい。

 何かないのか、何かないのか、と頭の引き出しを模索していると、アズサは気付いたように言った。

「そうだ。明日、ミズキの後ろの席にね、転校生が来るよ。女の子で、ちょっとつんつんした性格だけど、仲良くやろうと思えば、すぐに仲良くなれると思うよ。良かったね、女の子で」

 アズサはブランコから降り、やや不敵な笑みをこぼして自転車にまたがった。そして俺に見当がつかない微笑みを見せた後、置き去りにして自転車をこいで行ってしまった。しかし一声上げ、俺に振り向いた。

「そうだ、リョウ。余計なことは、余計にしか終らないんだよ」

 そう意味の分からない言葉を言い残し、ペダルを強く踏んで、今度こそは止まらずに行った。