シーソーゲーム

 レジで会計を済ませる時、なぜだか知らないが、ふと目に入った時計の針はまだ二時間しか経っていないと物語っていた。あの部屋では六時間経ったと、確かに時計を見たはずなのだ。ちゃんとその経過も見ていた。二時が過ぎ、三時が過ぎ、いつしかは七時になろうとしていた。しかしこういうことになるのはどういうことなのだろうか。

 まあ、きっと、この時計が間違っているのだろうと、内心そうやって目の前の現実から目を遠ざけようとしていたが、価格を聞いて驚いた。二時間での価格であったのだ。どうなっている、と首をかしげながらも、不思議で、何だか胸が痛くて、しかし二時間の料金で払うことにした。結局俺は開き直って、店員がそう言っているのだからいいのだろう、と思い、払うことに決めたのだった。

 そして店を出ると、店員が後を追いかけてきそうで怖かったので、早足で自転車のところまで行った。ミズキも同じような様子であった。俺と同じようなことを考えていたのだろうか。きっとそうだろう。顔がそう言っている。

 とりあえず、俺たちはそのカラオケ屋から逃げるようにして自転車を走らせ、時々後ろを振り向くのであった。なぜか俺たちは犯罪者というレッテルを貼られているようで、いつの間にか警察に追われているようで、気がかりでしょうがなかった。

 土手を通り、いつもの道を黙って走っていた。まだ信じられなかった。そのおかげで、放心状態が続く。しかしせっかくアズサがいつもの調子を取り戻したというのに、今度は俺たちがアズサの病気にかかってしまったようだ。

 ついに別れのY字路に着き、ミズキは左の道へ行ってしまった。この帰り道で、ミズキとは一度も話さなかった。

「じゃ、また明日」

 ミズキの背中は、まあ、いつもと変わらなかったが、まだあの状況が理解できない、動揺したような雰囲気を漂わせていた。

 そして俺とアズサは並列で自転車をこぎ進め、住宅街を通って行った。

 俺は何も話せないでいると、風がピュッと鳴り、それをきっかけにしたのか、アズサは口を開いた。

「ねえ、久しぶりに、公園に寄ってかない」

「ああ…いいが」