さて、誰が先陣を切るか。俺はそれだけを心配していた。ここに来て、沈黙のまま時間は過ぎ、金だけを払うという虚しい結果に終わるストーリーを考えてしまったからだ。なので今、俺が考えていることは、皆無に過ぎる時間をどう過ごそうかと考えていた。天井を眺めるか、何も映っていないテレビを無情に眺めるか、他にもあるが、迷うだけで終わりそうだな、と思った。
しかしその心配はなくなった。アズサは収録曲の雑誌を左手に、リモコンを右手に持っていた。ものすごい速さで指を動かしながら、時々雑誌のほうに目をやっている。
その姿を見ていた俺とミズキは唖然になっていた。気付いたら、もう入れた曲が十曲に達していた。
そしてアズサは手を止め、雑誌を置いて、リモコンからマイクに持ち替えた。
「…よし」
曲は流れ出した。しかしそのイントロは昨日、耳にたこができるほど聞いていた。
「アズサ、この曲、昨日お前が散々歌い散らしたじゃねえか」
「え…知らないもん。そんなの」
そしてアズサは歌いだした。
が、しかし、今日のこの聞きなれた曲は、いつもとは違った。なんだろう。なんか、心にしみるようだ。体中に染み渡るようだ。昨日とは、まったく違う曲のようだ。声が高いパートに入ると、そこが一番ピークだった。その時の俺は、なぜかと不審に思わずに、その曲に聞き入って、そして魅入っていた。
「ふぅー」
アズサが歌い終わっていたことに、俺は気付いていなかった。気付いた時には、もう次の曲を歌いだしていた。アズサ一人で、気持ち良さそうに歌っている。なんだかさっきまでのアズサがウソのようで、何かと不思議であった。悪魔から逃げ、やっと追いつかれないところまで来たというような顔をしている。
しかしその心配はなくなった。アズサは収録曲の雑誌を左手に、リモコンを右手に持っていた。ものすごい速さで指を動かしながら、時々雑誌のほうに目をやっている。
その姿を見ていた俺とミズキは唖然になっていた。気付いたら、もう入れた曲が十曲に達していた。
そしてアズサは手を止め、雑誌を置いて、リモコンからマイクに持ち替えた。
「…よし」
曲は流れ出した。しかしそのイントロは昨日、耳にたこができるほど聞いていた。
「アズサ、この曲、昨日お前が散々歌い散らしたじゃねえか」
「え…知らないもん。そんなの」
そしてアズサは歌いだした。
が、しかし、今日のこの聞きなれた曲は、いつもとは違った。なんだろう。なんか、心にしみるようだ。体中に染み渡るようだ。昨日とは、まったく違う曲のようだ。声が高いパートに入ると、そこが一番ピークだった。その時の俺は、なぜかと不審に思わずに、その曲に聞き入って、そして魅入っていた。
「ふぅー」
アズサが歌い終わっていたことに、俺は気付いていなかった。気付いた時には、もう次の曲を歌いだしていた。アズサ一人で、気持ち良さそうに歌っている。なんだかさっきまでのアズサがウソのようで、何かと不思議であった。悪魔から逃げ、やっと追いつかれないところまで来たというような顔をしている。



