「じゃあね」
俺の家の前で別れたアズサはさらに奥への道へと走り去った。
今日は毎日といたって変わらない日々の一ページに過ぎないものであった。日々平凡な人生に、非凡な人生を望む暁には、結局平凡が良かったと思えるような日に戻ることを俺は知っていた。もともと非凡な人生を歩むものは、逆に平民の人生に憧れることだろう。
俺はドアを開け、家に入った。不気味なにおいが鼻をつつくが、それはいつものことである。新築のにおいではなく、人工的に作られた、今のにおいであった。
「ただいま」
「お帰りなさい」
リビングのドアの向こうから声がし、においもそこからのものだと分かった。
俺は頭の辺りまで生える草木を掻き分けるようにして進み、階段を上がって自分の部屋に入った。特に変わったこともなく、いつもの自分の自由にいられるスペースだ。そこに勉強机があり、本棚があり、ベッドがある。俺は机にスクールバッグを投げ、ベッドに横たわった。
そして首を絞めるネクタイをはずし、一つずつ胸を締め付けているボタンをはずし、背中に食い込む布を直しながら、今日のことを思い起こしていた。
今日の朝、どんなことを思っていただろうか。学校に行く途中、何を考えていただろうか。学校に着いて、ミズキと何と話しただろうか、アズサはどんな登場をしただろうか。まるで今までの人生を振り返るように、はるか昔を思い起こしていた。それは近いようで遠いものであった。
俺の家の前で別れたアズサはさらに奥への道へと走り去った。
今日は毎日といたって変わらない日々の一ページに過ぎないものであった。日々平凡な人生に、非凡な人生を望む暁には、結局平凡が良かったと思えるような日に戻ることを俺は知っていた。もともと非凡な人生を歩むものは、逆に平民の人生に憧れることだろう。
俺はドアを開け、家に入った。不気味なにおいが鼻をつつくが、それはいつものことである。新築のにおいではなく、人工的に作られた、今のにおいであった。
「ただいま」
「お帰りなさい」
リビングのドアの向こうから声がし、においもそこからのものだと分かった。
俺は頭の辺りまで生える草木を掻き分けるようにして進み、階段を上がって自分の部屋に入った。特に変わったこともなく、いつもの自分の自由にいられるスペースだ。そこに勉強机があり、本棚があり、ベッドがある。俺は机にスクールバッグを投げ、ベッドに横たわった。
そして首を絞めるネクタイをはずし、一つずつ胸を締め付けているボタンをはずし、背中に食い込む布を直しながら、今日のことを思い起こしていた。
今日の朝、どんなことを思っていただろうか。学校に行く途中、何を考えていただろうか。学校に着いて、ミズキと何と話しただろうか、アズサはどんな登場をしただろうか。まるで今までの人生を振り返るように、はるか昔を思い起こしていた。それは近いようで遠いものであった。



