「…もしもし」


『どうしたの?鼻声だけど…。風邪引いた?』


「あっ、くしゃみしたばっかりで…アハ。」


あたしは、涙を袖で拭いながら無理に明るく振る舞った。


『アハハ、そっかぁ。可愛いね』


どこから想像できるだろう?こんな人が…タロウにあんなことするなんて。


「あの…マサト、明日なんだけど…」

『うん?…やっぱり無理?』


「あ、…うん。親がうるさくて」


…嘘ついちゃった。


エミにもタロウにも心配かけたくない。


『しょうがないね。…じゃあ…、今から会えない?声聞いたら会いたくなっちゃった』


「えっ、今?…ちょっと待ってて?」


あたしは通話口を指で押さえて、席に戻った。