〇切り文字屋、外、夕
   閉店の戸締りをしている静子。
   ホタルノヒカリが鳴っている。
   怖そうな男が一人来る。

タイガー「切り文字屋てここか?あんたんとこ金払わんきか!
 毎日来るよってに旦那にそう言うとき!」
   男、去る。
   他の店の者が見ている。
   主任が近づいてきて、

主任「誰?今の人?」
静子「車検屋のおやじ。新車がすぐ壊れてサービスで修理と
 言うたのに金取りよると言うて主人が払ってへんのよ」

主任「買うた車がすぐ壊れた。そりゃあサービス修理やなあ」
静子「でしょう、タイガーじゃもう買わんとき」
主任「そやな。いまどきサラ金の取立てでも規制法ができて
 おとなしいのに、いまのはえげつないなあ」
静子「タイガーまるだしやなあ」
   みんな大笑い。

〇京都地方裁判所、外、
   モダンな正門。
   守衛が車を誘導している。

〇同、通路
   松平、資料を抱えて歩いている。
松平「これで6回目や、もう完璧やろう」

〇同、第五民事破産窓口
   カウンターに松平が座っている。
   担当の宮前が資料を見ている。

宮前「あのう・・・」
松平「はっ?」
   松平、カウンターからのぞき込む。
宮前「これでいけるでしょう」
   松平、喜びの顔になる。

宮前「5階の会計に行って予納金を払ってきてください」
松平「おおきに」
   資料を受け取り笑顔で出ていく松平。