〇マンション、408号室、内、朝
   松平と静子、奥の仏間で正座して必死で祈っている。
松平と静子「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、・・・・・」

〇同、エレベータ、外、朝
   エレベータの扉が開き、坊主頭、
   紫スーツ、女執行官の順で歩いてくる。

〇同、408号室、外、朝
   坊主頭、紫スーツ、女執行官408号室の前に立つ。
   坊主頭、女執行官から書類を受け取る。
   坊主頭、インターホンを押し強く扉をたたく。

〇同、内
   インターホンが鳴り扉を激しくたたく音。
   松平と静子、仏間で立ち上がり玄関へ。
   松平が扉を開ける。
   静子、松平の背後に隠れる。

松平「どうも、ごくろうさまです」
坊主頭「松平静子さんはいてはりますか?裁判所から来ました」

   静子、おびえながら、
静子「私が、松平静子です」
坊主頭「あんたが静子さんでっか?」

   坊主頭、松平を無視して手に持った督促状の束を
   静子の眼先に突き出す。
坊主頭「これどないしてくれるんでっか?1年以上、
   何回催促しても無しのつぶて、借りたもんは
   ちゃんと返しなはれ。そうでなかったら・・・」

   松平が割って入る。
松平「ちょっと待ってや、わし・・」
   坊主頭、松平をにらみ、
坊主頭「あんただれや?」

松平「わ、わしは静子の亭主や。き、昨日の晩
   聞いたばかりで何も手が打てへんかったが、
   わ、わしが責任もって払うから・・・」

坊主頭「あんたご主人?ほな静子さんの分
   責任もって払うてくれまんな」
松平「ええ、もちろん」
坊主頭「ほな、この書類のここにサインして」

   松平、震える手でサインする。
   坊主頭、サインを確認して、
坊主頭「責任もって払うてくださいや」

松平「はい、払います」
坊主頭「ほな行こか」
   坊主頭、紫スーツに声をかけて玄関の扉を閉める。

〇同、408号室、外、朝
   坊主頭、書類を女執行官に渡す。
女執行官「じゃ、戻りましょうか!」
坊主頭と紫スーツ「(素直な声で)ハイ!」
   通路を歩む3人の後ろ姿。