花と闇

「ですが、暴力的な言葉でも、暴力をふるっていなければいいだなんて……間違ってます!」
「それは私達が判断する話でない。」
冷静に言った。
「暴力的な行動で、無理に自白させることは禁じられている。その判断に関しては公正だ。」
そう言うと、クラウジアを見る。
「お前達にも話を聞くことになる。」
「全て話したが。」
「一応だ。そいつが退院してからで構わない。」
シャルドネはヴォルフラムを見た。
「どちらにも話を聞かねばならないからな。今のそいつを取り調べるわけにもいかない。」
そう言いながら立ち上がる。
「役所を暫く留守にするやも知れない。用事があれば、軍の方に来い。見張りには話しておく。」
「解った。」
クラウジアの返事を聞くと、シャルドネは去った。
「あ!」
リコリスもその後を追う。

それから三日が経った。
未だ目が覚めないヴォルフラムをクラウジアは見つめる。
「いくらなんでも、寝すぎだ。」
悲しげに呟くも、応えはない。
そっと頬を撫でる。
耳に、銀髪に、触れていく。
「……いっそ、このまま眠っていた方が御前にとっては幸せなのか。」
(きっと、今も死にたいのだ。)
そう思い、出会った時を思い浮かべた。

『こんなこと望んでない。この記憶も心も捨てたかったから……だから、死んだのに!!』
吠える声がした。
『……御前は、死にたいのか?』
歩み寄れば、男は何も答えずに唸る。
ヒトの言葉ではない声で叫び、半狂乱で襲い来る。

それでも、私は手を伸ばした。
不思議と殺される気はしなかった。

後から知った話だと、愛する女と喧嘩し、別れた後に女が別の男と結ばれたという。
すれ違いから始まる小さな誤解が原因だった。
それ以来、女とは連絡が付かず、二度と会うことは出来なかったという。
男との幸せを知ったのは噂だった。
知り合いがそう言っていたのだ。
素直に喜べないことよりも、二度と誤解を解くことが出来ないことが悲しかった。
苦しんだ末に死を選んだという。
これ以上生きていて、正気で居られる自信はなかった。
そういって、逃げたと話していた。

『女を愛したのは初めてではない。転生する度に愛してきた。……きたないだろう?』
自嘲気味に言う。
その男を私は孤独だと思った。
傷つき、愛し、喪う。
孤独で脆い男だ。
だからこそ、愛した。

「御前は、死にたいか?」
問いを口にする。