花と闇

呆れて言う。
『目的は何だ?』
『特にない。』
『取り調べを受けてもらう。』
『好きにしろ。』
あまりの無関心さに呆れる。

そして、軍で取り調べた。
しかし、特に情報はなかった。
解ったことは一つ。
この男は機密情報を手に入れるのが目的ではなく、この施設に居た者であったということ。

死亡者リストには男と同じ名前があった。
“ヴォルフラム”
その名は偶然というにはあまりにも出来すぎているほどに男と瓜二つだ。
だが、死亡したことになっている。
遺体も埋葬してある。
彼が愛した女。
“アリシア”と共に。
話によれば、寄り添うようにして死んでいたという。
その光景を見た者が、共に埋葬してやるように言ったのだろう。

“転生”
男は信じてもらえないことを知っている表情で話した。
話によれば、今まで何度も転生してきたという。
軍のことを知っているのならばと思ったが、上層部が信じるはずもない。
それに、恐らくこの男は自分を利用する気がない私に言ったのだろう。
『面倒事は御免だ。』
そう言って去った。
それは、これ以上軍に関わりたくないと見えた。
(愛した女が死んだのだ。そういう気持ちも無理はない。)

「だから、お前が恋仲になったと知ったときは驚いた。……恋も、もうしないのだと思っていたから。」
「随分と肩入れするな。役人のくせに。」
「シャルドネさんは、お人好しなんです。」
シャルドネに言うクラウジアに、割り込んだ女性の声はクラウジアが知らない人物だ。
「リコリス。ノックぐらいして入れ。」
「すみませーん。」
リコリスは隣に座った。
「取り調べは終わったのか。」
「はい。」
頷いて、クラウジアとシャルドネを見た。
「……やはり、怯えているようでした。」
「何かしたのではないだろうな?」
クラウジアは疑いの目を向ける。
「いいえ。私は何も。女の子に乱暴する程、野暮ではありません。」
静かに答えて、表情を暗くした。
「ただ、私の前に取り調べをした人は怒鳴っていたようですが。これは、後で録画されている光景を見て知りました。」
リコリスは溜め息混じりに言う。
「取り調べのことは録画されて不正がないかを確認する仕組みです。しかし、その規定も理不尽で」
「リコリス。」
シャルドネは嗜める。
「そういう物言いは敵を作る。」