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将来の

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「利理。
 これと、これ、どっちがいい?」

「え?これって・・・物件?」


ぽん、と渡された資料は
戸建ての物件。

「引っ越すの?雅人さん。」
「うん。利理の希望は?」


ちょ、ちょっと待って。
また、雅人さんの暴走?!


「雅人さん・・・・大切なことを忘れてます。」
「え?あぁ、ごめん」

ちゅ。


ちがう。
うれしいけど、そっちじゃない。


「あの。」
「好きだよ。利理。
 ネイルも、似合ってる。やってもらったの?」
「そうそう。昨日 羽菜ちゃんとこでやってもらったのぉ。
 ラメ入れてもらったんだ。」
「いいね。ブルーのさわやか系も似合うんだな。利理。」

褒められてうれしくなって
ふふ。とソファーに腰を下ろす。

・・・・って
違う、違う。

「あの、雅人さん?
 この物件って・・・」
「ん?ダメだったか?
 一応 選りすぐったんだけど・・・」
「違うくて、なんでもう一緒に住むこと前提なんですか?」
「・・・・え?」

珍しく 雅人さんが言葉に詰まる。

「あー・・・そら、あれだよ。」
「・・・いや、別にいいですけど
 こういう大事なことは一緒に決めたいというか、
 ちゃんと、言葉にして欲しいっていうか。」

「・・・俺が 離れたくないから、
 一緒に住もう?利理。」

「っ!!」

低音の少しざらついた声が耳元にキスを落とす。

ずるいなぁ。
そうやって言われたら、
拒否 できないじゃん・・・する気も無いけどね。

「はい。一緒にいたいです。
 雅人さん。」
「ありがとう。利理。」
そういって、ふわっと 抱きしめられた。



その後、雅人さんは きゅっと姿勢を正した。
「では、こちらの物件は・・・」
仕事モードで、おすすめ物件を5件紹介されて
さすが、営業だなぁとそのトークに感心する利理なのでした。


**

「もー。
 こんな大きな家じゃなくていいのにぃ」
「え?そうなのか?
 利理は大きな家に住みたいのかと・・・」
「え?そんなことないよぉ。
 普通の大きさの家がいいし。
 集合住宅でも構わないわ。雅人さんがいればいいんだもの。」

「・・・ふふ。そうか、
 俺が 部長とか社長にならなくても
 利理は俺と一緒にいてくれるのか?」
「あら、それこそ願ったりだわ。
 社長とか ならないほうが いいなぁ。
 ある程度の稼ぎがあれば 問題ないわ。」

私が働けばいいしね。

「ふーん。
 利理、愛しているよ。俺を選んでくれてありがとう。」

そんな口説き文句を言われて
ときめいた 利理さん でした。

でも、その後
会社の後継者を弟である海人部長に押し付けて
利理希望(?)の集合住宅を含むショッピングモール開発に着手することを
今はまだ 知る由もないのでした。