風香の目線に曖昧な苦笑を返したところで

さてと。

気持ちを切り替えて本日のランチである苺ミルフィーユさんと向き合う。


ミスコンで得た唯一の喜びの瞬間!


幾重にも重なるパイ生地に

ふわりと降りかかるパウダーシュガー、

そこから芳香を放つストロベリーの甘い誘惑に

口を開けた瞬間である。


ほんの一瞬、

クラス内にザワつきが起こったと思ったら、

アタシの前に影が出来て

頭上から静かに声がかかる。


「ハナ、お昼、行くよ」


そう言った右崎が

アタシの手を取って廊下を顎で指した。


「え、ちょ、えぇ?」


動揺するアタシをガン無視して


「羽鳥さん、ちょっとだけ借りるね」

「いえいえ、どうぞどうぞ♡」


なんて、

小さく微笑んで風香に勝手に了承を得た右崎に強制連行された。