あたしこそが最愛最高の姫である








実桜ちゃんには悪いけど、自分のせいで傷つく彼女を見なくていいのでほっとしていた。





それに実桜ちゃんなら煌が必死で守ると思うから安心だし。






こんなことを思う俺は酷い男なのかもしれないけど、決して叶う事ない相手にまだ心底惚れていだけなのだ。






ずっと隠していたけど、美玲ちゃんと会うようになって自然に周りに漏れていた気持ち。





また隠し通すことは出来るだろうか。






「和矢との写真はもう消されてるし、お前じゃなくて兄貴の方が本命扱いされてるから、まぁまだマシになるのかもな」






……こんな些細な一言で胸を抉られているようなら、まだ完璧に隠し通せることは不可能なのかもしれない。







「……生徒会には少しも近づくなよ。廊下も生徒会室前を通らずに別の道通れ。まぁ和矢じゃなくて他の奴らも。鉢合わせしたらめんどくせぇ」







「絶対また喧嘩売ってくるぜ、あいつら。俺らが族ってこと微塵も気にしてなさそーだし。何だっけ?いつか、会長が言った言葉」








「……“この学校で偉いのは俺らなんだから逆らうな、クソが”だろ」







「煌に啖呵切った時は俺、あいつら殺されるかと思って一瞬期待したのに煌、お前何もせずにただ突っ立ってただけだもんな」









「……………………………あの時のこと、忘れることは一生ねぇだろうなぁ」







「一生とか重いだろ、煌。てかその間どした?」








喋っているのは煌と蒼だけど、だんだんと雰囲気は重ぐるしいものから軽いものへと変わっていく。







長い説教の時間も終わったのだろう。








「……いや、懐かしいなと」








「何か年寄くせぇな。……あぁ、でもあん時は俺もビビった。確か生徒会の姫さん、俺あん時に初めて見たからさ?あんな美人いるものか、ってめちゃくちゃ感激。てか横に煌しかいなくて、直ぐに他の奴ら呼んで姫さん見せびらかしたくなった」







「………そうか」







「……あ、なんか反応わりぃなって思ったら俺らの姫さんの前で他の女褒めたらダメか」








……煌も蒼も気づいているのだろうか?







2人の会話を聞くたびに泣きそうになる俺を。





ついに普段はパソコンなんて触りもしない玄武がパソコンをさっきから弄っていることを。






実桜ちゃんが、軽く唇を噛みしめながらなんとか笑っていることを。








彼女の影響は俺だけにとどまらず、絶大だ。








そんな彼女をもう少しだけ好きでいることを許してください。






あんなすばらしい人を簡単に諦めるなんて、俺出来ないから。









「ただいま食堂から帰宅しましたーーーって、あれ。和矢いるじゃないですか?」








純粋に好きな人の元へ毎日アピールしに通っている時雨の登場に、また泣きたくなった。