「玲。写真撮られすぎじゃない?」
「いいんじゃね?俺らのツーショットだし。たかが家族写真だろ」
「そっかぁ。でも絶対ネットに載せられてるよね」
玲が運転する車で走ること一時間。
少し遠い気もするこのショッピングモールは、全国でも有数の広さを誇る結構有名な場所だ。
だから地元の人のほかにも、結構他の県とかから来ている人が多いはずなのに…。
なぜか、すれ違う人にカメラやスマホを向けられる。
そういえば、あたしは現在進行形で一番ネットで騒がれている人物だったのだ。
ちなみにどこで調べたのか、家に朝早くから芸能事務所からいくつか電話が入ったが、玲が即却下していた。
それでも普段から見られていることに慣れているあたしと玲は、全く周りの視線なんて気にしない。
でもたぶん、兄弟とかじゃなくてカップルとして広まってしまうのだろう。
やばいね、炎上しそうな予感。
「玲、お腹すいたぁ」
それでもあたしは通常運転。
玲を見てにっこりとほほ笑む。
すると既に片手が埋まるほど荷物を持っている玲は、にっこりとほほ笑んで、あたしの頭をそっと撫でた。
とたん、周りからのフラッシュが強く光り、少しだけ悲鳴が漏れた。
「すごいね、注目されまくってる」
「ネットに上がった写真、あいつらに消される前に数枚保存しとこうなぁ。てかさ、後でプリクラ撮ろ?」
我が兄ながらイケメン過ぎて、そして女心をとてもよく理解していらっしゃる。
「わ、あたしもプリクラのこと考えてた!」
「美玲のことならなんでも分かるから」
甘ったるい言葉を、甘ったるい笑みで吐く兄は、女心ではなくてあたしの気持ちだけ理解しているのか。
「んじゃ、あたしクレープ食べたい」
「クレープはおやつ。昼だから普通のご飯食べるぞ」
でもそれでも、マナーやこういうところは少し煩い。
「……玲、あたしがクレープ食べ過ぎて太ったらどうしてくれる?」
「美玲が?なら全力で痩せさすな」
ここで太ってる美玲でも好きだよ、なんて言わないところが玲らしい。
「ならあたしも玲が太ったらごはん何も食べさせないようにするー」
「なら太らないようにしないとな、って。美玲料理しないだろうが」
「たまにはするよー?気分で」
「1年に数回、ホットケーキを気分で食べたい時だけ焼いて一人で食ってるもんな」
「玲にも少しあげてるから大丈夫」
「……あぁ、なんかホットケーキ食いたくなってきた。材料買うから今日のお礼に作って?ネックレスとほかにもブレスレット買ってやるから」
「喜んで作るっ!あたしね、なんとかストーンって名前の入ったブレスレットが前からほしかったの!」
「高いやつなんだな、それ」
「当たり前でしょっ。せっかく玲が買ってくれるんだから高いの買わなきゃ、ね?」
ふはっ、と吹き出す玲に微笑む。
優しくて、甘くて、厳しくて、あたしの好きな言葉をくれる玲は。
やはり度を越えたシスコンであった。
「んもう美玲のためならマンションだって安いよ」
「んもう玲、死ぬほど好き」
さぁ、思う存分お買い物をいたしましょうか。
美玲side*END