あたしこそが最愛最高の姫である







彼女から目が離せない。





一人で歩いているだけなのに圧倒されそうな存在感。





玄武が彼女に気づかないのが不思議で仕方ない。





そして彼女が玄武へと近づく。





玄武はチラリと一瞬だけ彼女に視線を向けただけ、かと思ったら。





動きをピシッと止めて勢い良く彼女の方を向いた。





その玄武の顔は少し遠いこの場所からでもはっきり分かるほど真っ赤に染まっている。





……やっぱ姫のことが好きなんだ。





仲間の思いにドクリと心臓が嫌な音を立てる。





でも彼女はそんな玄武には一切視線を向けず、俺に向かって歩いてくる。





玄武は彼女の背中を視線で追っているだけ。






あと、三メートルほどで彼女に近づける。






立ち止まる俺との距離はあと二メートル。








一メートル。








…三十センチ。









彼女は俺が立ち止まって穴が開くほど見ているにも関わらず、全く俺を気にしていなくて。





大きくなる胸の鼓動と、緩んだ涙腺を必死になって抑える。









そして____俺と君との距離、ゼロ。








でもすぐに開かれると思っていた距離。





しかし彼女は足を止め…、俺を見上げた。







「……あれ?いつかの屋上の?」






彼女の口から出た言葉が信じられずに目を見開く。





彼女は困ったような笑みを浮かべ「さすがに覚えてないか?」と少し寂しそうにそう言った。






「もちろん…、覚え、てるよ」






そしてやっとの思いで出した声は、少し震えていた。





懐かしい声に全身が喜びと感動で震えている。




ずっとこの声が聞きたかった。




目に焼きついた残像じゃなくて、耳に残った声でもなくて、本物の姿と声を。





あぁ……俺、今幸せだわ。