騎王*和矢(かずや)side
「あれ、実桜(みお)ちゃんは?」
気持ちの良い天気が真上に広がっている屋上でのんびりとくつろいでいる俺たち。
最近は雨が降っていないので簡易式の持ち運びが簡単なソファーをいくつか持ち込んだ。
そんなソファーで爆睡している男一人と、ただソファーに座ってボーっとしているだけの男と、ソファーではなく地面に座りフェンスにもたれかかっている俺の男3人がここにいる。
男だけでむさ苦しい気もするが、いつもは5人でもっとむさ苦しい。
いかつい男ばっかりがたむろしまくっている倉庫に行けば窒息レベルだ。
でもそんな窒息してしまう空気の中、最近空気洗浄器のような存在が出来た。
“石原実桜”
その名の通りさくらがいつも咲いているような笑顔を浮かべ、明るい子。
顔や姿から、ウサギのような小動物を誰もが思い浮かべるほど可愛い。
そんな彼女は俺たち騎王の“姫”となった。
姫というのは総長の女のこと。
騎王の先代たちにも例外をいくつか除けば姫は必ず存在していた。
まぁもちろん姫の存在の理由はいくつかある。
こんな時代にでも暴走族はまだ衰えていなくて。
いくつもの族が存在している。
その中にはもちろん仲の良い族もあるし、代々敵としていがみ合っている族もある。
で、そのいがみ合っている族との関係は最悪で。
お互い潰されないように意識しているし、潰すことも意識している。
そして潰すときには人質を取られることもあって。
騎王でも先代の総長の彼女が人質として捉えられ、悲劇を生んでしまった。