あたしこそが最愛最高の姫である










「…………つまんない」










そうポツリと呟いて、噴水の傍にあるベンチに腰掛けた。









「…………別に婚約者でも何でもいいんだけどなぁー」










乾いた笑いを漏らした。








玲が何を考えているのか最近はよくわからない。









そんなことを考えながらざぁーざぁーと迫力を纏った様々な色に輝いている噴水の水を見つめる。








どうすれば人が綺麗と思えるものが綺麗と思えるようになるのか。









どうすれば玲の望む言葉を吐ける自分になれるのだろうか。









自分が他人と違うのは嫌というほど理解している。










「………つまらないわ」









もう、何もかもすべてが。






再びそう呟いたとき。










「…………堂々と教師と表舞台に出るなんて……マジで馬鹿だなァ」











ふと、むき出しの右肩に重みとわずかな暖かさが伝わった。









反射的に顔を横に向ける。












すると至近距離で綺麗な顔をした男と向き合うことになった。










____________こいつ。








この男、学校の階段のところであたしに絡んできた男だ。







顔が異様なほど整っているからよく覚えている。







そんな男が顔を優越気に歪ませていた。










「肩、離してよ」









「…………"婚約者"なんだってな?あの教師の」








……人の話聞けよ。








そもそもなんでこの男は玲の婚約者の話を知ってるんだろ。








なんで、この男がこんなところにいるんだか。







あぁ、何もかも全部イラついて来た。







ほんっとう最悪。







「さっさとあたしから離れてくれる?」









あたしは今、機嫌が悪い。










「聞けねぇな」







「あたしに上から目線なんてしないで。あたしが離れてって言ってんだから離れなさいよ」










マジでイラつく。








この綺麗な顔をこの飾られた爪でひっかいてやりたい。








血だらけになって、ぐちゃぐちゃな顔になればいいのよ。












「………ふっ」








男は口角を上げて微笑み、さらにあたしの方に回している手に力を入れた。









必然とあたしは男に寄り添うようになってしまう。









「離せって言ってんじゃん。玲が来たら、あんた玲に潰されるかもよ?」









適当な脅しをかけながらも、腕を組み男をにらみつける。










「______それともなに?あたしに跪いて愛の言葉でも囁いてくれる?」










嘲笑うように口元に笑みを薄く浮かべた。









「出来ないでしょ?なら離れて」










プライドの高い男は扱いやすい。







でも、そんな男なんて嫌いだ。












「あたしは玲のもの。何を勘違いしてるのか知らないけど____顔だけで性格が残念な男はさっさと失せて」










一瞬男の力が緩んだ。










パンっと肩に置かれた手を弾くと、顔から余裕が消えた男がただ唖然としている。











「学校にバラすならどうぞご自由に。でも次あたしに触るようなことがあったら……本当に地面に膝と頭、付けなさいよ?」












………自分でもこの言葉はないな、とまた薄く笑った。











でも本気であたしに跪いて来る男は頭がおかしいのかと思うけど……こいつぐらいの美貌だと絵になっていいのかもしれない。








玲は…………似合ってるケド、似合ってない。








あの男と玲が跪いている所を想像すると断然あの男方がしっくりときた。









「何か言えば?」









ハッと息を吐く。








そしてもう一度だけ男を見て立ち上がった。







自分のグロスがべったりと塗られた唇を数回人差し指で叩く。









「んー。あたしね、自分の思い通りにならないことって大嫌いなんだけどさ?________あんたのことは死ぬほど嫌い」









コテンと首をかけて笑う。










「金輪際あたしに話しかけないで」









そのままべっとりとグロスがついてしまった指を男の唇に近づけ………なんてことはせずに、ベンチの背もたれに擦り付けた。









思いっきりバカ面になってしまっている男を放置して、あたしはガーデンを去った。