そして家に帰るため死ぬ気で上った階段を降りる。
だけどチャイムが鳴る前だからか、あたし一人だけが人の波に逆流している。
でもあたしの顔を見た人は道を自然と開けてくれるので、まだ何とか階段を降りることが出来た。
たった一階分。
……まだこんなに人の中に突っ込まないといけないのか、と思わず階段でため息をついたとき。
「…………美玲?」
ガヤガヤとうるさい中、鮮明に嫌な声が聞こえた。
振り向かなくても完全に誰だか分かってしまった。
あたしのことを美玲なんて呼ぶ人、この学校には一人しかいないのだ。
思わず回れ右して階段を駆け上がろうとしたけれど…。
どうやら直ぐ近くにいたようで、難なく手を拘束されてしまった。
周りからはその本人に挨拶がかかっている。
そしてその声に爽やかげに微笑みながらも、握っている手に力を込める________玲。
あぁ、また怒られる。
朝の説教を思いだし、げんなりとした。
「美玲。どこ行こうとしたんだ?」
「……トイレ」
「わざわざ人の多い階段を突っ切ってまでか?一年の階にももちろんトイレぐらいある」
「あー、迷っちゃって」
なんとか玲の追及の言葉を視線を交わしている中、じろじろと沢山の視線に見られている。
中には大袈裟に、階段に足を滑らせた人らしき者もいた。
それを横目で見ながら思わずため息を吐く。
ここで玲に捕まれば絶対に教室に戻される。
そうなれば喧嘩を売ってしまったヤンキーが教室で待っている。
………メンドクサイの一言だ。
そんな状況を何とか回避するため、いい案はないかと考えた。
そしてふと、周りの視線を感じて思い出した。
今は玲はあたしより数段下の段にいるので、多少玲の方が身長はまだ高いものの、それに大した差はない。
にっこりと玲に微笑む。
玲は一瞬顔をしかめたが、また言葉をつづけようとしたとき……。
「れーーーーいっ」
出来るだけ大きな声で叫んで、玲の首に勢いよく手を回した。
「うおっ………」
そして_________落ちた。


