そんなことをぼんやりと思っていると、険しい表情をしていた煌の表情が穏やかになり。








「でも知ってるか?お前の名前にある桜の花言葉。“純潔”や“精神美”だぜ?お前、汚れてねぇーってよ」








煌が柔らかい声色でそう言った。









「流産のことは本当に残念としか言えない。そりゃさ、お前も悪いとこばっかだけどさ?子供を降ろさずに、親との絶縁を覚悟してまで産む決意したことはすげーと思うぜ?お前が感じられなかった愛を注いでやりたかったんだろ?」







「なら、次に本気で恋した相手との子供に二人で愛を注いでやりゃーいーじゃねぇか」







薄く笑った煌は、実桜ちゃんをしっかり見つめる。









「俺は何もしてやれねぇけど、自分一人でも変われ。立ち上がれ。座って泣き続けても何も進まない。今までよく頑張ったな?これからは息抜きしながら歩こーぜ」








そして実桜ちゃんは……ポロリ、静かに涙を流した。









「な、によ……っ。何もしらない、くせに……。適当なこと……言わないで…………っ」









続けて涙が零れ落ちる実桜ちゃん。








初めて、彼女を綺麗だと思った。









あぁ、煌は彼女のこの姿に一度でも惹かれたのかもしれない。









「でもお前はやっていいことと悪いことを間違えた。生徒会に非があったとしても先に手を出したのはお前だ。それに生徒会は、どうにもなんねぇよ」









フッと笑った煌は、目を細めて彼女を見つめた。








「もーちょい早くその顔見せてくれてたらな……」








そう呟かれた彼の言葉は、実桜ちゃんの嗚咽に途切れて、誰にも届くことなく消えてしまった。