「………おい、聞いてるのか?なんであんなことした?」







煌が実桜ちゃんに問い詰めているのは昨日、ステージ上に乗り込んだこと。






俺らは見ていないけど、下っ端たちからすぐに連絡が入った。







そしてこのまま放置するわけにもいかず、今日呼び出したのだ。








「…………だって。気に入らないじゃん…」








「何がだ?」






やや食いつき気味で実桜ちゃんに問いかける煌。







「……あたしだって可愛いのに、あの女だけいい思いしてさっ」








彼女から紡がれる言葉はひどく理不尽な言葉。







「………まさか可愛いから騎王の姫になれたかと思ってんの?」







煌の目がギロリと実桜ちゃんをにらみつける。






「…だって、そうでしょう!?人って顔で全部決めるじゃん!!」







「……本気で言ってんのか?俺らが顔ですべて決めてたって?」








「じゃぁ顔じゃなかったらなにで人は人を判断するのっ!?」








……ふと思った。








実桜ちゃんは、明らかに何かおかしい。







"顔で人を判断するのは当たり前"






そう本気で思っているのではないのだろうか。







……もしそうなら、彼女が納得いかないのも少しは理解できるかもしれない…。










「あ?性格とか雰囲気とか色々あんだろ」








「は?本気で言ってるの?性格なんて顔の二の次じゃん!性格がよかったら誰かが振り向いてくれるの?そんなのただの綺麗ごとでしょ!?人はみんな顔がいいから振り向くんじゃん!すれ違ってもブスには誰も振り向かないもん!それどころか避ける人だっているでしょ!?」









確かに彼女のいうことも一理ある。








「…………お前、ただの通りすがりの人に何求めてんの?通りすがりの人が振り向こうが振り向かまいが本人には何も関係ないだろ」








煌の言うことも一理ある。









「振り向いてくれないより振り向いてくれたほうがいいに決まってる!それが自分のステータスになるの!!」










「…………そんな女、ただのつまんねぇ女だな」








人には人の正論がある。







価値観がある。







この二人は価値観がまるで違って意見がぶつかり合うだけだ。









「あんたには理解でいないわよ!!あたしがどれだけつらい思いをしたか!!!」








「はっ。知る分けねぇな」