こんな俺に、和矢を慰める権利も声をかける言葉もない。
……めんどくせぇ。
仲間が落ち込んでる理由が恋愛に関してだとしても、何も出来ない俺がメンドクサイ。
「……煌まで辛気くせぇ顔しやがって。ったく、マシな時雨はまだ帰ってこねぇのかよ」
「……時雨なら購買行った」
蒼の方を向くと、蒼と目があった。
一瞬だけ鋭い視線を俺に向けた蒼。
………こいつは勘がめちゃくちゃいい。
洞察力が抜群に優れている。
きっと俺の内心も何か気づいているんだろう。
「あいつも、こいつもどいつも……。そんなに女が好きなのかよっ!」
その蒼の言葉の中に俺は入っているのだろうか。
机の上に置いたミルクティーをただ眺めている和矢、ボーっとパソコンを眺めている玄武、好きな女がいる購買に通い詰めている時雨。
………一体これは何なのだろうか。
生徒会の姫……。
ここまで人を惹きつけるとは。
生徒会だけに留まっていればいいものの、俺らにまで影響を及ぼしてきて。
ただ和矢と玄武が顔だけで惚れた……ってことはなさそうだ。
顔で惚れただけなら、ここまで落ち込むはずもないだろう。
………どうしようもない。
人の気持ちなんてそうは簡単に動くわけがない。
あれだけ生徒会や篠原に大事にされている生徒会の姫なんて尚更。
…………“諦めろ”
そんな言葉で片付けれる想いなら、二人もとっくに吹っ切れているだろうに。
俺も、諦められているだろうか。
それにもし生徒会の姫が和矢か玄武のどちらかを選んだとしても、二人の間には亀裂が入るかもしれない。
暴走族なんて所詮世間からは疎まれて、世間のごみ扱いされているけど……。
そんな存在でも俺にとっては大切なもの。
誇り高き聖龍。
そんな聖龍が、生徒会の姫によって揺らがされているなんて………あるまじき事態だ。