フリードは武将たちの顔を眺めまわしながら続けた。

「現在のところ昼の間は数の上でこちらが有利となっていますが、夜は夜目の利く奴らが圧倒的に有利です。兵を交替で休ませ夜間の戦闘にも備えさせていますがやはり体力的にきついらしく、確実に多数の死傷者が出ているという苦しい状況です」

―苦しい状況。

フリードが口にするまでもなくそれを誰もがわかっていたが、諦め顔の者などこの中に誰ひとりとしていなかった。いや戦闘中のすべての兵士たちを眺めまわしてもそんな者はいなかったろう。

皆の瞳には同じ輝きがあった。希望という名の輝きがあった。

結界が効力をなくし、次々と王都内部に魔月が現れた日々。民は逃げまどい、兵は疲弊し、早晩滅びるよりほかないだろうと誰もが絶望した日々。

そんな彼らを救ったのが、消えない虹だった。

それが空に架かるのを見た者は皆、そのあまりの美しさに声をなくした。霞んだ空に神がそっと絵筆を走らせたようだったという。その虹がもたらしたものは、あまりにも大きかった。

魔月に対抗する力を宿した武器。

星麗のように水のみで生きられる体。

そして希望。

それをもたらしたのが誰なのか、人々にはわかっていた。

その日から、彼らの心にはたったひとりの希望の乙女が住んでいる。

だから誰ひとりとして、諦める者などいない。強くあれない者などいないのだ。