ライトは物言わぬ漆黒の墓標のようにその場に立ち尽くしていた。
そして不意にがばりと、握りしめたままだった桜色の髪に口づけた。確かに心の奥底から湧き上がってくるものに、突き動かされるように。
その瞳には、切ない光が宿っていた。
それからリュティアはどれだけひた走ったことだろう。ぐるりと城の外周をめぐって城門を見つけ出し、そこに魔月と戦うアクスを見つけた時、どれだけほっとしただろう。
ああ、アクスたちが助けに来てくれた。そう思った。
走ってくるリュティアを見て、アクスは心底から安堵したように胸をなでおろした。
「まったく、どこまで私に手間をかけさせる! あなたという人は」
「アクス…!!」
リュティアは思わずその逞しい腕に飛び込んでいた。郷愁にも似た想いでいっぱいになり、その腕の中から離れる気がしなかった。
アクスはリュティアを取り戻したので、魔月たちの相手はそこそこに撤退にかかった。
アクスに抱きかかえられながらその見事な斧さばきを眺めているうち、リュティアはおかしなことに気がついた。
カイの姿がないのだ。
どこにも見当たらないのだ。
―カイは…?
―カイが、いない…?
リュティアはかなり長い間呆然としていたのだろう。気がつくと遠く城門を離れ、二人は山の中を歩いていた。
「カイが、さらわれるあなたを見たというから、急いで追ってきたんだ。とにかく本当に、無事でよかった…!」
アクスの声が紡いだカイの名に、リュティアは敏感に反応した。
―カイが、さらわれる私を見た…?
ではなぜ今カイはここにいないのだろう。
―カイは………助けに、来てくれなかった…。
その事実は、不思議なほどリュティアを打ちのめした。
ライトの告白が嘘だったことより…そうだ、ひょっとしたら聖具がすべて破壊されてしまったことよりも、リュティアを打ちのめした。だからリュティアはしばらく上の空でアクスの言葉を聞いていた。
そして不意にがばりと、握りしめたままだった桜色の髪に口づけた。確かに心の奥底から湧き上がってくるものに、突き動かされるように。
その瞳には、切ない光が宿っていた。
それからリュティアはどれだけひた走ったことだろう。ぐるりと城の外周をめぐって城門を見つけ出し、そこに魔月と戦うアクスを見つけた時、どれだけほっとしただろう。
ああ、アクスたちが助けに来てくれた。そう思った。
走ってくるリュティアを見て、アクスは心底から安堵したように胸をなでおろした。
「まったく、どこまで私に手間をかけさせる! あなたという人は」
「アクス…!!」
リュティアは思わずその逞しい腕に飛び込んでいた。郷愁にも似た想いでいっぱいになり、その腕の中から離れる気がしなかった。
アクスはリュティアを取り戻したので、魔月たちの相手はそこそこに撤退にかかった。
アクスに抱きかかえられながらその見事な斧さばきを眺めているうち、リュティアはおかしなことに気がついた。
カイの姿がないのだ。
どこにも見当たらないのだ。
―カイは…?
―カイが、いない…?
リュティアはかなり長い間呆然としていたのだろう。気がつくと遠く城門を離れ、二人は山の中を歩いていた。
「カイが、さらわれるあなたを見たというから、急いで追ってきたんだ。とにかく本当に、無事でよかった…!」
アクスの声が紡いだカイの名に、リュティアは敏感に反応した。
―カイが、さらわれる私を見た…?
ではなぜ今カイはここにいないのだろう。
―カイは………助けに、来てくれなかった…。
その事実は、不思議なほどリュティアを打ちのめした。
ライトの告白が嘘だったことより…そうだ、ひょっとしたら聖具がすべて破壊されてしまったことよりも、リュティアを打ちのめした。だからリュティアはしばらく上の空でアクスの言葉を聞いていた。

