「他に、他に方法はないのですか」

ラミアードに対し声を上げたのはラミアードの隣に座したカイだ。

カイの声…。

それは今のリュティアに痛みを与える。

カイの顔を、リュティアはまともに見ることができない。けれどその存在が近くに感じられるだけで、慕わしくて泣きたくなる。

カイが好きなのだと、思い知る。兄としてではない、異性として好きなのだと。

リュティアは昨夜ばらばらに砕けた心のかけらを今も必死に集めようとしていた。その鋭い破片でどんなに傷ついても集めようとしていた。痛いのに、少しでも集めて“想い”の形にして、抱いていたかった。カイへの“想い”は、それほどに大切なものだった。

「王都全体を、守ればいい。そんな記憶などいらない」

むきになったようなカイの声。もっと聞いていたい。なんでもいいから聞いていたい。

「簡単に言ってくれるなカイ。また空飛ぶ魔月が現れるかもしれない。一番に守るべき〈光の道〉の場所は、やはり知っていなければならない。なんにせよ、聖乙女の力は我々の希望だ。彼女にはリュリエルの力とやらを、一刻も早く取り戻してもらう」

「………」

「そのためには近衛隊長に続き、もうひとつの虹のたもとであるヴァルラムへ、宝玉を持って今すぐ誰かが旅立たねばならないだろう。信頼に足る人物で、この戦火をくぐりぬけられる戦闘能力に優れた者が理想だ。カイ、お前が適任ではないか」

「私が?」

フリードの言葉に、カイはすぐさまいやだと言いたかった。