「覚えてるだろ?君たちは一年前、佐倉奈々に何をした?」


ハルはさっきとは真逆で、憎しみのこもった目で睨み付けた。
そして、多田をチラッと見ると満足そうに笑う。


「一年前…………。」


一年前は、多田や佐々木とも違うクラスだったし、佐倉とも違うクラスだった。
しかし一年前、佐倉にしてしまった事は知ってる。



いじめだ。



勿論、直接は関わっていない。
けど…………佐々木と一緒に、佐倉を見て笑っていた。


立派ないじめだ。


「思い出した?これは、その時の借りを返しただけだよ。」

ハルの言うことをまとめれば、ハルは多分、中二の時の感情が別離してしまった人格。
そしてハルは、いじめに関わった人間を、全員殺すつもりだ。







「僕は、お前らが大嫌いだ。」










ハルは、外身が佐倉とは思えないくらいの殺気を放っていた。
目は鈍く光り、血のついていない手をぎゅっと握る。



大嫌いだ、とハルは、何度も何度も言った。
それは、自分に言い聞かせているようにも思えた。






「……佐倉は今どこにいる?」








そう聞くと、ハルは再び無邪気な笑顔に戻った。


「佐倉奈々は、まだ寝てるよ?僕の事も知らないし、今起こってることも知らない。

起こしてほしい?」


ハルはいたずらっ子のように笑うと、頭をトントンと人差し指で差した。

そこにはきっと、佐倉がいる。
何も知らない、綺麗な心をした佐倉がいる。


教えたくない。

まさか自分が、こんなことをしたなんて知ったら、きっと佐倉は自分を責めるだろう。
「私なんか死んでしまえば良い」なんて言って、自殺してしまうかもしれない。


「佐倉には……言うな。
これは全部、お前がしたことだ。佐倉は関係ない。」


「そんなこと言われたって、僕は佐倉奈々の一部なんだけどなー。」


ハルは、相変わらず笑ったままだ。
いかにも楽しそうに、スキップなんかしている。


「ま、僕も鬼じゃないしね!
条件付きなら、そのお願いを聞いてあげても良いよ。」