「それでどうなったんですか、その彼氏」

「それでね、そいつの頬を思い切り、平手で叩いてやったのよ。その後、女みたいに倒れて、気持ち悪かったよ」

「はは、なんか想像しただけで変な感じですね」

 こんな会話を続けて、いつの間にか一時間が過ぎていたことに気が付かなかった。そのうえ私たちの関係は、当に他人の枠を超えていた。顔を知らない相手とメールをしているなんて、恐くて変なイメージがするが、安心して話せる相手になっていた。似たような経験をした後だからであろうか。

「何か眠くなってきましたね。今日はこの辺でやめましょうか」

「そうですね。ちょうど目が痛いと思っていたところですよ。では、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 私は携帯を閉じて、机の上に置いた。そして部屋の電気を消してベッドに横たわる。窓からは、一筋のきれいな月光が差し込んでいた。満天の星は今日も夜空のような私たちの町を見ていることだろう。

 そして私は再び今日の不思議な出来事に対する興奮に襲われた。その興奮を抑えきれず、私はたまらず布団にもぐった。なんだか貸間とは気が合いそうだ。これから楽しくなりそう。そう思いながら、ついつい笑みをこぼす。

 寒い秋の出来事の、これが私の本当の出逢いであった。