「…と、こんな風に」

「面白いね、それ。きっと小説家にでもなれるよ」

 二人は笑い合い、そしてまた男は何かに気付いた。

「あれ…ここに、小さい穴がある」

「え、どこどこ」

「ほら、ここに二つ…」

 それは何かキリのようなもので穴を開けたようであった。

 そして今度は男が思い立った。

「俺も思いついた、話」

「え、どんなの。聞かせて」

 二人はその場に座り、男は貝殻を見つめた。

「それは、そう…」


 変わらずここは漁村。だが大きな町である。港町とも言える。ポルトガルの町並みのようにきれいで、そして都市のように賑やかだ。観光客も多くいる。毎年この季節になると、この町を訪れる。

 そしてそこに、ある日本人夫婦がハネムーンをしに来ていた。だから何があっても楽しく、ただこれからもこのままだろうと予知さえできた。

 泊まっているホテルの夕食で、妻は肉料理を、夫は海鮮料理を頼んだ。そして出てきたフルコースを堪能していた。その出てくる料理はどれも一級品だった。途中、コースに出てくる蛤は最高で、その貝殻は記念に持って帰ろうと思った。だが何に使おうか。後先考えずにとりあえず空き箱をためておく私の癖がここに出た。

 ウェイターに貝殻を包んでもらい、そして部屋に戻って、楽しい一夜を過ごした後、翌朝から海に出た。やはり日本とは違う海はきれいで、透き通るようで、見える光景は海の自然を魅せていた。

 時間は経つのが早いもので、昼には上がり、妻はショッピングをしたいと言うが、夫は疲れもピークなので、部屋で休むことにして、昼を共にした後、別れた。

 妻はショッピングを夕方まで存分に楽しんでいた。

 夫は三時頃まで休んでいた。そして起きると、思い切り背骨を伸ばし、体を組み立てた。夫にはやろうと思ったことがあった。あのフルコースに出てきた貝殻を、海でどう使うかを考えたのだった。