今日は大漁に魚や貝を獲った。いつもより一段と多く獲ることができた。足が軽く、家までの帰路が近く思えた。

 家に帰ると、温かい家庭が待っている。親と兄弟と祖父と祖母の笑顔が待っていた。

 そしてそれらをあらゆる調理法で調理して、それを皆と食した。多くいる家族はやはり一日の食べる量も半端ではない。だから常に持って帰る量は足りないものでは一日で餓死してしまう。働ける兄弟なんかも今は私しかいない。親はまだ現役だが、祖父はもう体が悪い。

 この村で私は長く生きてきた。まだきっとこれからも暮らしていくことになるが、もしかしたら一生ここを離れないかもしれない。それが私たちの村の伝統であり、家を継ぐのも後継である。

 そろそろ結婚も考えていた私は悩んでいた。実はもう付き合っている人がいるのだが、彼女はどう思っているのか。

 私は家を出て、危うく消えかかっている日を頼りに浜辺を歩いていた。悩みながら歩いていたので、いつの間にか砂泥地に変わっていることに気付かなかった。日の光が足元を照らすと、私は気になるものを見つけた。そして手を伸ばし、泥の中からそれを引っ張り上げた。それはハマグリであった。

 私はそれをしばし見つめ、そして日が沈むと、私は思いついた。

 意気込みを入れて家に帰り、早速そのハマグリを調理した。そして弟たちに食べさせ、その貝殻に文字を書き連ねた。自分でも困ったほどにペンを進めることができない。素直に書くことができない。それが恥ずかしくて、書けない。

 私は一旦書くのを止めて、明日までに考えておこうと思った。

 漁を終わらせ、また書き始めようと、砂浜で書くことにした。だがやはり考えることも書くこともできなかった。

「何やってるの?」

 彼女は忽然と現れた。それに驚き、私はその持っていた貝殻を、海に向かって思いっきり投げた。

 彼女はなぜ投げるのかと聞くが、私は答えられない。君のために文を書き連ねていたのだよと言った暁には、私があの太陽の変わりとなってしまう。そんなこと、絶対に言えない。

 私はもう終わったことだからいいよと伝えるが、私はこれから何をすべきか、何をしなければいけないのか分かっていたような気がした。