タカラモノ~桜色の片道切符~

ベッドの端に腰掛けると美桜はまだ眠っていた。



顔に掛かる髪を払い耳にかける。歪む表情は魘されているというよりも痛みを堪えていると言った方が近い



「美桜」



左手を弱く握ってやり、タオルで額に浮かぶ汗を拭った



額から顔、首筋と冷たいタオルで汗を拭っていると、美桜の目が薄っすらとあいて、何度か瞬きをした後に視線があった



「目覚めた?眠かったらまだ寝てて良いから」



腫れた瞼が痛々しく、重そうだ。



「美桜。水飲もう」



飲ませないと自分からは飲んでくれない。


まだ熱もあるようだし、言われたように注意しないと脱水症状を起こしかねない



「持ってくるから」



握っていた左手を離すと、キッチンに行き冷蔵庫からイオン飲料と水を取り出すとグラスと一緒に寝室へ



「飲んで」



ペットボトルからグラスに注ぎいれる。ベッドに座ると美桜の背中を支えるように抱え起こしグラスを口元に近づけた



「辛いかも知れないけど薬だと思って頑張って。飲めなきゃ本当に入院だから」



多分、妹のことがあっていつも以上に病室の空気に過敏になっているんだと思う



コクリと喉がなるのを確認しながら噎せさせないように美桜のペースにあわせてグラスを傾けていった