タカラモノ~桜色の片道切符~

魘されている美桜の頬を軽く叩き、覚醒を促す。


呼吸も苦しそうだ。



彷徨いながら伸ばされた左手をしっかりと握ってやる。



今自分ができることはこれくらいだから



「美桜」


薄っすらと涙と熱で潤んだ目が開いた。



『ごめんなさい』



彼女の瞳がそう訴えているようで……



「美桜は悪くないから」



片手で美桜の手を握りながら空いた手で髪を撫ぜた



『ごめんなさい』



「美桜のせいじゃない」



彼女が美桜を襲ったのも、美桜を庇うように彼女の夫が倒れたのも



涙が落ちてきて、呼吸が乱れてくる。


初めて会った時以上に美桜の心が悲鳴を上げているのがわかった