タカラモノ~桜色の片道切符~

「はい。佐々木さん?」


「美桜ちゃん?取材許可下りたわよ」



電話の主は担当編集者の佐々木さん。



中学1年生でライトノベル作家としてデビューして早9年。


高1で一般小説に進出して6年になろうとしていた。


「本当ですか?うれしいです」



次の少女小説物の新作、舞台はホストクラブ。



そのためにホストクラブの取材を申し込んでいたのだ。




「ええ。じゃ、またメールで送っておくわ。何か考え事でもしてた?反応遅かったけど」



「いえ。今大学なんですが少し感慨にしたっていたんです」



「まだ若いでしょ」



「じゃ。よろしくお願いします」



「こちらこそよろしくね。桜井センセ」


桜井航



これが私の作家名。美桜の桜と彼、航大からとった航。



女性であること以外は全て非公開で通している。



私も彼も法律上は大人になった。




もしも大人になって出会ったのならばそれは運命。













誰かが言った言葉に淡い期待を捨てきれない



























「逢いたいな」




手帳を開き取材日と締め切りをチェックしながら呟いた。




櫻海線の廃線は3月、今は5月。










廃線の日には地元へ帰ろう。そう決めて、目の前のことに打ち込み始めた。