「…何やってんだ」
彩芽が拓海の存在を忘れてくつろぎだそうとしていたところで、当の拓海の声が唐突に頭上から聞こえた。
「…っ!か、かかか神崎さんっ!?」
彩芽は驚いて飛び起き、ベッドの上に座りながら壁に寄りかかる形で拓海に向き合った。
(うー…。恥ずかしい…)
「…白」
「え?」
彩芽が変なところを見られてしまった恥ずかしさから俯いていると、拓海がそう呟いたため顔を上げた。
最初は何のことだか分からずに首を傾げていた彩芽だったが、拓海の視線を辿ることによってその意味を理解した。
「……っ!?きゃ…っ!」
飛び起きた拍子にスカートが捲れ、彩芽の下着が露わになっていたのだった。
そのことに気づき、慌ててスカートを正す彩芽。
しかし、気づくのが遅く、拓海に確実に見られていることに変わりはなかった。
「白地に水玉とか、まだまだお子様だな」
「なっ…!」
ただでさえ穴があったら入りたい状態の彩芽だったが、追い打ちをかけるような拓海の言葉に頬を一層紅潮させた。
「俺は黒とか紫の方が好きだけど」
その後も意地悪そうな笑みを浮かべながらからかってくる拓海に、彩芽はせめてもの対抗として涙を堪えながら拓海を睨みつけた。
「…それ、誘ってんの?」
そんな彩芽の態度に対し拓海はそう言うと、ベッドに膝をついて身を乗り出し彩芽の顔の横の壁に両手をついた。
「…え?」
状況を理解できない彩芽を拓海の影が覆った。
目の前には、スーツのネクタイを緩めワイシャツのボタンを数箇所外す拓海の姿。
その仕草が妙に色っぽかったため、彩芽の鼓動が高鳴り頬は赤みを増した。
(な、な、何?この状態…)
ゆっくりと近づいてくる拓海の顔。
「…っ!だ、だめっ…」
なんとかこの状態を回避するために両手で拓海を押し退けようとしたが、逆にその両手は拓海に捕らえられてしまった。
そのまま自分の頭上で片手で素早くまとめられ壁に押し付けられる。
「じっとしてろ」
(…そんなこと言われたってっ!)
恥ずかしさとこのままだと危ないという危険予測から、彩芽はどうこの状況を打開すべきか考え手を振りほどくために捕らわれている両手に力を込めた。
「彩芽」
しかし、そんな打開策も甘い声でそう囁いた拓海によって壊された。
名前を呼ばれた瞬間から、心臓がうるさい程音を立てた。
そして、目の前の拓海を見ると、先程とは異なる優しい瞳と大人の色気が漂っていて目が離せなくなってしまった。
(…っ、だめっ…なのに…)
彩芽は既に両手からは力が抜け何も考えられなくなり、いつしか迫りくる拓海を受け入れていた。
