何で奏が抱きついてるの?
「奏、離れ…て」
「――嫌?」
「いや」
じゃ、ない。
嫌じゃない、けど、
何で私を抱きしめるの?
何で?
何で何で何で?
「幼稚園の時に深雪に振られた時から、太一ならしょうがねぇって、俺、多分ずっと、太一には何も敵わないって思ってた」
冷房の稼動する音と、下校のチャイム、それ以外は私と奏の心臓の音が突き破りそうなほど、響き渡ってくる。
煩いぐらい。
息も出来ないぐらい。
「深雪は、しっかりしてるけど、一人でなんでも突っ走ることがあるし、一人で悩んで相談してくれないこともあるけど、いつも隣で笑ってくれて俺を理解してくれて、……居てくれるのが当たり前だと思っていた」
瞬きも忘れて、息の吸い方も忘れて、ただただ私は静かに奏の話を聞く。



