ちょっとだけ、奏の様子がおかしかった。
いつもの明るい雰囲気じゃなくて、ちょっと思いつめたような、甘えたような。
図書館は既に勉強している人たちで席は満員だった。
冷房の効いた図書室は確かに気持ちがいいから涼みに来たい気持ちは分からなくもない。
「何探すの?」
「今日の小テストに出ていた本。日本語で売ってるの見たことあって」
「ああ、ね。タイトルは?」
「えっと」
話していたら、視線を感じた。
どうやらテスト前でピリピリしているようでテーブル席の人たちに睨まれた。
私語は厳禁みたい。
私は奏にタイトルを耳打ちすると、奥の外国文学の棚へ探しに行く。
読まれないのか、大分誇り臭く、人も居ないから小さな声でしゃべる。
「あった、あれだ」
一番上の棚の端っこに見つけたが、届かない。
奏が脚立を取りに行ってくれたけど、その背中は広くて遠くて、ふいに泣きたくなりそうな衝動が広がっていった。
奏も太一も、私の心の一部なのかと思うほど、心に喰らいついて離さない。
――ずっと、好きだった。
好きで居られたのは、応援してくれる太一が居たから。
だから、今、なんだか足元がふらつくの。
何も考えられなくなるぐらい。
二人も心に居るから、重たくて上手く私は歩けないのかもしれない。
「ほら」
持って来てくれたのは四本足の、階段みたいな段になっているプラスチックの脚立。
「ありがと」
上って取ってくれようとした奏より先に登る。



