「だから、奏にも陰でそう思われてたのが嫌なの。奏だけには。
ちゃんと私たちに聞いて欲しかった。私たちの言葉じゃないのを信じて欲しくなかった。我儘、ごめん」
奏なら聞いてくれると思った。
そんな訳ないって周りに否定してくれると思っていた。
「俺も……、その」
普段の馬鹿やっている奏の姿もなく、真面目な顔で私を見る。
薄茶色の、猫みたいな優しい瞳で。
「そんな噂、嘘だって思ってたし、もし本当ならなんで二人は俺に言わないんだろうって、ぐるぐるしちゃって、気づいたら成績落ちちゃって受験ヤバくなってて、そのまま二人に勉強教わってたら有耶無耶になったから」
「あの成績ががた落ちしたの、私たちの噂のせいだったの?」
「だって、なんか自分から聞くのが悔しくて!」
鼻を摩ったり、髪を掻きあげたり、奏の手は忙しなく動く。
落ちつかず、目もキョロキョロしていく。
「悪い。まだ混乱してる」
「混乱?」
「なんか、ホッとしてるし、なんか、なんで今まで色んな子と付き合っても長続きしなかったのか……分かった気がして」
「奏には、私。誤解されたくないって言った意味分かる?」
口元を押さえて首を振る。だけど、それでいいと思った。それで良いって。
「俺が、なんでこんな安心してるのかお前は分かる?」
そう言われると首を振るしかない。
そんな、自分の思い込みで傷付きたくなんてないんだから。



