「深雪ちゃんは、奏くんだけじゃないよ!ずっとお兄ちゃんもいたんだからね!」
今、やんわりと距離をとってくれたばかりなのに、そんな事言われたら何だか胸が痛い。
「うん。私も太一は大切な幼馴染だよ」
そう言うしかなかった。
玄関を開けると、夏の風が私の髪を浚う。
むわっとした熱気のような風。
蝉の声。
日がまだ沈まず、そこで燻っている。
『好き』の形は様々で、美緒ちゃんも好きだけど奏を好きな気持ちとは違う。
私の中にある、奏への『好き』と太一への『好き』は、形も色も重さも違うんじゃないかな。
ちゃんと、好き。大好き。
だから、三人で会って遊べることにわくわくしている。
だから、大切な幼馴染だと、それだけだと言われて胸が痛い。
私は、欲張りすぎるんだと思う。
これ以上、何を望むというのか。
欲張り過ぎて嫌になる。



