何で――……。
奏の顔が目に浮かぶと、また視界がぐらりと揺れた。
「大丈夫、何でも、ない」
「なんでもなくないだろ?」
心配そうに顔を覗きこまれたら、もう止まらなかった。
太一は、優しくてふんわりと包み込んでくれるような温かさがある。
甘えたらダメなのに。
私が、甘えると、椎田さんみたいに傷つく人が増えるだけ。
なのに、私の手は、私の意志を無視して太一の服を掴む。
縋る。
「奏が、私と太一が中学の時に付き合ってたと思ってたって」
「――うん」
「中学の時点で私は、奏の眼中になかっ――」
言葉に出してみると、思ったよりも現実的に思えてしまった。
自分の言葉が、私自身をえぐっていく。
突き刺さる。
「深雪、おいで」
よしよしと頭を撫でられて、私は太一の胸に顔を埋めた。
汗の匂いが、太一の体温を運んでくれて、包まれているような安心した気持ちになる。
「ごめんね。いっぱい応援してくれたのに」
「……ちょっと、家で話さないか?」
他の高校や中学生、犬の散歩するおばさんなどに注目されて気まずげにそう言うと、私の手を引っ張った。



