腕を……?

試合終了間際、私がもしシュート決めれたら逆転勝ちだった終了5秒前。


故意に私の腕を引っ張り一緒に転倒したのは……。


「どんな子だったか覚えてないかな。なんかあの後、病院まで謝りに来てくれたのは覚えてるけど、あの日はほとんど何も記憶になくて」


故意だったことは向こうの先生と一緒に謝ってくれた。
試合は私の代わりに入った子がシュートを決めたけど、時間ギリギリで、協議の結果判定負けしたことも。

「う――ん。あの子も相当怒られてたから、もうあまり気にしないことにしてるんだけど」


お互い最後の試合だったから、綺麗に終わりたかったけどね。
名前とかも本当に覚えてない。


「お前がそこまで言うなら、俺らも気にし過ぎかなって思ったけどさ」


観念したのか、自転車に教科書を入れると、ゆっくりと押し始めた。


「まぁ、その子があのインタビューでちょっとだけ隅っこに映ったんだよってこと。深雪が分からないならもう見ないでやってよ」

「そっか……」

無言のまま。校門まで二人で歩く。

昨日、あんなに冷たかったのは、――私を守るため?

奏があの日、わざとタオルで視界を塞いだのも?


「……ありがとう」

二人とは確かに距離は出来たかもしれないし、昔みたいに三人でべったりしなくなって寂じかったけど。



根本的な二人は何も変わってなかったんだよね。