「奏。ちょっと」
テスト前に部活が休みになる度に噂されるのは、部室に教科書を置いてないか抜き打ちチャックがあるとかないとか。
過去にあったらしく皆、大人しく持って帰るのに、奏のロッカーだけは漫画と教科書で溢れかえっていた。
それを怒られるのかと奏はビックリしているけど、違う。
「あのインタビュー、何も変なこと無かったよね?」
単刀直入に聞くと、奏の体が飛びあがった。
「見ちゃったの?」
「見ても分からなかったの!」
奏が深いため息を吐きながら、ロッカーからいくつか教科書を出すと、鼻を摩る。
「まぁ、いいじゃん。分からないなら良かったよ」
「良くないわよ! ちゃんと教えてよ! 教えないとテスト勉強見てあげないんだから!」
「ええ――。あ――、でもなあ……」
困惑した奏が教科書を団扇代わりに仰がせながら、私を見下ろす。
そして小さな声で言う。
「お前、最後の試合で腕を引っ張ってきた奴、覚えてる?」