「深雪ちゃん! 深雪ちゃん!」
こそこそと太一のいる応援席に向かっていたら、美緒ちゃんに呼びとめられた。
号泣するしたまま抱きついてきたので、ゆっくりと髪を撫でて抱きしめた。
「すごいね。―――凄いよね。一気に球場の空気を戻したよね」
「うん。嬉しい!」
ボロボロと泣く美緒ちゃんを抱きしめたまま、しばらく呆然と立ち尽くしていたら、
どたどたと全力で通路を走る音が聞こえてきた。
「深雪!」
息を切らして現れたのは、―――今日のヒーローだった。
さっきまで挨拶を終えたら、号泣する仲間たちと抱きあっていたはずのヒーローだ。
「太一! 太一!」
「来てくれるとは思わなかった。届いたよ、深雪の声」
泥だらけの顔から、こぼれ落ちそうな笑顔。
私は、今、一人で戦った太一の本当の顔と向き合った気がする。



