「…・・・」
「……」
太一が居なくなってからも、まだ奏は私の手を離さなかった。
呆然と愕然とした顔。
少し顔色が悪かった。
「奏…」
「や、俺、二人が付き合ってると思ってたのは、あの太一の雰囲気だったのかも」
反対の手で髪の毛を上げながら、奏は乾いた笑顔を浮かべる。
「太一の深雪を見る優しい目はさ、嘘じゃない。本気だと思う」
「奏、私」
「俺は、深雪を信じてる。気づくのが遅れた俺を受け止めてくれたし。俺も、自分の気持ちに気づくのは遅れたけど、深雪を好きな気持ちは太一には負けない」
その言葉に、またポロポロと涙が零れる。不覚にも溢れて来る。
違う。違うの。
奏にそんな優しい言葉を貰えるほど、私は良い人じゃない。
きっと、分かってた。
太一の気持ち分かってたけど、三人で居たくて、距離が離れないように、ずっとこのままでいるように。
――見ないフリ、していたの。



