「深雪! やばい、俺やばい!」


朝一ですぐに目の前の席に座ると、真っ白なノートを開いて見せてきた。


「今日、この列当たるのに俺、何もしてなかった」

「――昨日、遅くまで遊ぶからでしょ?」

流石に制服で出かけてたから深夜にはならなかったけど、十時過ぎに奏のお母さんが怒鳴る声が聞こえたから、また連絡もしないで遊んでいるんだなって分かった。


「ちょっと、ホントにピンチ、ここ教えてよ」

写させて、とは言わないあたりは評価してあげたいけど、一週間も時間があったのに何をしてるんだか。


仕方なく、朝のHRが始まる前の数分間、適当に教えてあげた。


ちょっとでも奏に気がある子なら、簡単に見せてくれるはずだけど、
それでも私に聞いてくるんだから、ついときめいてしまうんだ。


「昨日、楽しかった?」

問題を解きながら、何気なく奏がそう聞いてきた。


「うん。楽しかったよ。決まってるでしょ」

トントンとノートを指で叩き、間違えているスペルを指摘しつつ、可愛くない言葉をついつい吐いてしまう。