「お願いだから、そんな顔しないで」
悲痛な太一の声が胸を抉る。
「俺が、どんなに抑えて奏の元へ送り出したと思ってるの?」
「ごめっ 離して」
「俺を選んだら、そんな顔、しなくなるのか?」
ぎゅっと握られた腕が、痛い。
胸よりも痛く感じて、悲しくて、自分が情けなくて泣けて来る。
「そんな幸せそうじゃない、辛そうな顔するなら、俺はもう我慢しない」
ガサガサと葉っぱが風邪に揺れる音さえも、スローに聞こえてくる。
掴まれた。
心臓を掴まれた。
だから私は動けない。
死にそうで、動けないんだ。
「――もう奏には、譲らない」



