「深雪、太一くんが来てるわよ」
奏がご飯を食べている時、母にこそこそとそう言われた。
「は? じゃあ、入ってくればいいじゃん」
「誰にもナイショにしてって。奏くんは任せてほら、行きなさい」
意味深なウインクをされて、仕方なくサンダルで外に出た。
さっきの今で、一体何があったと言うのか。
「深雪、こっち」
太一は、ウチの車の横に隠れるように座りこんでいた。
「どうしたの」
「縫い終わったらどうやって終われば良いんだっけ? 終わり方が分からなくて」
太一はユニフォームを見せてきた。
私のお守りが縫い付けられた場所から糸がついた針が出ている。
困ったように頭を掻く太一が、やっと年相応な姿に見えてクスクス笑ってしまった。
「貸して。ライトはある?」
「ああ、携帯のライトが」
「じゃあ、手元に当ててね」
奏に格好悪い所を見られたくないのか、ライトが見えないように、私の家に背中を向けた。
「本当に、私で良かった?」
太一の性格のような真っすぐな縫い線を見ながら、感慨深くてつい聞いてしまった。
「太一を好きな子や、あのマネージャーみたいにさ」
「深雪はちゃんと心をこめて作ってくれたろ?」
私の言葉にかぶせるようにしてそう言う。
「これぐらいは、俺が決めるよ。大事なものだから」



