「太一!」
いつの間にか開けられたドアに持たれるのは、制服姿の太一だった。
「邪魔して悪いんだけど」
「悪いって思ってないだろ」
奏が間髪いれずに怒鳴るが、太一は顔色も変えずに私を見た。
「そろそろ、周りやマネージャーが本当に煩いんだ。お守り」
「あ、出来てるよ!」
ベットに駆け寄り、枕元に置いていたお守りを持ち上げた。
「それがお守り?」
奏も覗きこみ、首を傾げた。
「うん。可愛くて一晩一緒に寝ちゃった」
はい、と太一にお守りを渡すと、太一の顔が綻んだ。
太一のスモックを着た小さな女の子の顔。
背中からお守りのメッセージを入れて塗った自信作だ。
「うん。深雪らしくて可愛いよ。ありがとう」
太一が握りつぶさないように、優しく手の中に抱きとめるようにお守りを置く。
「頑張ってね。テスト開けに試合って大変だけど」
「練習で負けたんだろ~。油断するなよ」
私と奏のちゃちゃに太一の顔が引き締まる。
「ウチの高校に練習で勝ったと吹聴している高校に、負けたくない。そんな噂を流す前に練習に身を入れるべきだ」
――どうやら太一の耳にも届いていたらしい。
静かな青い炎が燃えている。
「ノーヒット、ノーランだ」
「大きく出たな」
「お守りの効果を証明するために、ホームランも打ってやる」
太一は笑いもせずにそう言った。
驕りではなく、本当にそう自信があるぐらい太一は努力しているんだと思う。



