「本当に部屋に上がるの?」
珍しく教科書を持って、大人しい態度で頷く奏を睨んでしまう。
――二人っきりの部屋とか、昨日の今日では、恥ずかしくて無理なんですけど!
そう思いつつも、入れるしかなく。
リビングで呑気にお茶を飲んでいる母を横目に二階に上がって行く。
お母さんにとってはいつものテスト対策の勉強会に見えるだろうけど、
恋人になってからの初めての二人での密室なんだからね。
とかそんな事を言えるわけもなく、平常心で机に座った。
「どこから行く?」
「日本史と英語と地理」
――明後日のテスト順か。
とは言いつつも、土曜に既にヤマを張っていたので、それを見せていく。
「そういや、甲子園を掛けた決勝戦の時に、俺らも浜松のバスケ部と試合するけどさ」
「するね」
「午前中なら、午後の試合に間に合うよ。即効勝てば、すぐ着く場所じゃん」